教育について

■教育のみに望みがあるV

勉強とは

 勉強という言葉をわざわざ漢和辞典で引く人もあまりいないでしょうが、敢えて引いて元々の意味を見てみたいと思います。ある辞典(藤堂明保編)には、
 @困難なことをむりにがんばってやること。
 Aむりに勧める。とあり、
また別の辞典(諸橋)には、
 @力を尽くしてつとめる。精を出す。
 A学問を励む。勉学。とあります。

 漢字にしろ九九にしろ、困難なことをむりにがんばってやる、力を尽くしてつとめる、そういう側面がなければ身に付きません。人間が社会に出て生きていくためには、自分の好き嫌いに関係なく最低限のものが頭の中にたたき込まれ、詰め込まれていなければ、創造性など生まれてくるはずがないのです。アレルギーのある子どもは別にして,あれも嫌い、これも嫌いという子どもには、本人の気持ちや意志に逆らっても、食べさせなければ生命にさえ関わるのです。

 

時期を逃さずに

 勉強の勉と言う漢字には、@つとめる。はげむ。の意味だけでなく、Aしひる。せまる。という意味もあります。この時期までにはこれを習得させなければ後々まで響くもの、発達課題というもののあることを知っておきたいと思われます。中学生や高校生になっても九九ができない、漫画も楽しめない、まして本も新聞も読まない・読めない、そんな子どもがいるとすれば、その子はどうすれば良かったのでしょうか。本人の努力と責任ではどうにもならない障害を持つ子どもは別として、然るべき時に然るべき勉強をさせてもらえないということは、子ども子ともにとって最大の不幸だと思います。

 

全ての出発点は子どもとその教育

 思いつくままにとりとめもなくお話しして参りましたが、一番言いたかったことは何だったのかということになりますが、地域の幸せの根本、地域の発展の土台は、子どもである、ということです。だからこそ、乳幼児の時期と小中学校の時代は、充実した時間を過ごして貰いたいと願わざるを得ないのです。望月が結局一つになれなかったのは、子どもに目が向いていなかった、町の将来の担い手は子ども達なのだと、真剣に考える方が少なかったからではないでしょうか。教育が充分に重視されていなかったからなのではないでしょうか。俺たち老人より子ども達のためにもっと金を使ってくれ、と考えるお年寄りが多くなかったからではないでしょうか。どんな子ども達に育って欲しいのか、どんな子どもに育てたいのか、そうした教育のビジョンと哲学がどれだけハッキリしていたのでしょうか。学校という建物をぼこぼこ建てたり新しくすればそれで教育は充分だ、ということにはなりません。仏を造っても魂を入れなければならないのと同様、学校はその中身が問われなければならない、と思うのです。

 

先生方に望む

 教員生活を望月で大過なく平和に送りたいと願う校長先生や教頭先生には望月にはいらないのです。教師も労働者だと旗を振る先生もいりません。必要なのは子どもの人権を保障して下さる先生です。子どもの人権とは何か、それは学力の保証と自立です。学ぶことが楽しい、覚えることが楽しい、知ることが楽しい、勉強することが楽しい、要するに学校が楽しいと言えなくては学校ではないと思うのです。一人でも楽しいけれど、仲間がたくさんいれば、もっともっと楽しいのです。教え合い学び合って楽しいはずの勉強、楽しいはずの学校が、中学生になると、家では勉強にエネルギーを割けないほど部活に熱中していていいのでしょうか。勉強が楽しければ、楽しく学べる空間が学校にあれば、そこにいじめも不登校もなくなると思うのです。

 先生方に問いたいです、と言うよりはお願いしたいのです。『教室が本当に学びの空間になっていますか』、『一人ひとりの子どもがしっかりと学びに取り組んでいますか、参加していますか』、『授業が大切にされていますか』、『1時間授業をして、1時間子ども達を幸せにしましたか』、『どれだけ知的な楽しさを子ども達に味わわせていますか』、と。『子どもの自主性を言う前に責任はどうなっていますか』、『創造性を言う前に基礎や基本はどうなっていますか』、と。

 

子どもは社会の希望でありエネルギー

 絶望的な想いになることはしばしばあります。しかし、そこから立ち上がらせてくれるのは子ども達なのです。教育のビジョンを持つことが、地域を再生する第1歩だと思っております。

 気分がめいると一番小さな子どもがいるゆり組(2才児クラス)に自然と足が向きます。気分も落ち着きますし、何よりも元気になるのです。いささかキザな言い方になるかもしれませんが、子どもから元気を貰っている、のです。子どもたちは私たちの力なのです。無力の存在に目を向けることが教育であり、同時に福祉であると私は思っております。教育のビジョンと哲学を持つことが地域活性化の早道なのではないか、ということを申し上げて終わりたいと思います。

 

ご静聴ありがとうございました。

 

理事長:小林一正

 

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